シネマメディカルカフェ(8月4日) 報告

8月4日に元町映画館で行なったメディカルカフェの報告です。

がん哲学外来というものについてネットで調べてみたのですが、2009年から、樋野興夫医師を理事長に「特定非営利活動法人(NPO法人)がん哲学外来」が設立されたとありました。神戸にも1箇所あります。

なぜ「哲学」という名称を用いたのかは、映画の中では樋野医師からはとくに語られておらず、まあ、参加する人が考えなさいということだと理解しました。

カントという哲学者は、哲学について「すべての人が承認するような哲学の体系は具体的には存在しない、従って、哲学は学習されるものではない、わたしたちはただ、哲学的に考えることだけを学び得るのである」といっています。

県立須磨友が丘高校で、「臨床哲学」という講座を担当していますが、そこでも哲学的に考えることを基本に哲学対話を行なっています。生徒さんには、「哲学(テツガク)するとは、観ること、考えること、話すこと」と伝えています。

http://schphilo.livedoor.blog

まちなかカフェ風(ふう)・がん相談室は、がん患者さんが具体的な相談に訪れる場ですが、それ以外に患者さん同士の「わかちあい」を行なっています。その「わかちあい」が、メディカルカフェでもあります。ただ、当会のメディカルカフェは、わかちあいとは別に哲学対話の場として行いこともあります。

10月5日に絵本をテーマにメディカルカフェを行う予定です。

https://livingwillcafe.blogspot.com

さて、8月4日の「シネマメディカルカフェ」では、映画をみて「考えたこと、感じたこと」についてみなさんと対話をしました。

がん患者さんは、いろいろな不安を抱えながら情報を求めてがん相談室に来られます。今の治療をいつまで続けたらいいのか、他に方法はないのか、主治医との関係がうまくいかないのでどうしたらいいか、転移や再発の不安、これまでできていたことができなくなっていく不安等々。

しかし、参加される方の多くが抱いている思いは、Why me ? (なぜ、この私が?)です。旧約聖書にあるヨブの嘆きです。

告知を受けたあと、治療中はなかなか考える余裕はありませんが、なぜ生きるのか、何のために生きるのか、生きることや死ぬことと向き合う時間も出てきます。

そのときに、対話ができるのは、やはり同じ苦しみや悲しみを体験した人たちだと思います。対話(dia-logos)とは「言葉(logos)を分けあう」ということです。ひとりで苦しんでいないで、対話を通して、生きることや死ぬことと向き合っていけるようになればと願っています。

映画では、言葉が「処方箋となって患者さんを癒すことができる」、そうした場として哲学外来(メディカルカフェ)があるのだというメッセージでした。

つまり、メディカルカフェは、「いのちをテツガクする」場です。

医療もそうですが、人生には正解はありません。不確実なものでもあります。そうした不確実性への耐性を養っていく、それが病とともに生きることかもしれません。

ただ、正解はないですが、「こたえ」はあると思います。ただ、すべての人が承認することができる普遍的な「こたえ」はありません。あるとしたら、患者さんひとりひとりが探求していくものではないでしょうか。「テツガクする」とは、ひとりひとりが「こたえ」を探求していくプロセスだと思っています。

もうひとつ、なぜ言葉が処方箋になるのかという問題です。多分、同じ悩みや苦しみをかかえた人同士、わかりあえる中で交わす言葉だからだと思います。言葉の中には心ないものもあります。

言葉を発する人がたとえ善意であろうとも、患者さんを傷つけることは避けられません。なかには、悪意から(意図的に)人を傷つける言葉もあるでしょう。

メディカルカフェで語られる言葉は、体験者でないとわからないこころの苦しみから出た、他者への思いやりから発せられる言葉であるように思います。ですから、がん相談室に来られた方は、ほとんど帰るときはみなさん笑顔でお帰りになります。

では、映画の中で語られた「言葉の処方箋」を以下に挙げて終わります。

掲載につきましては、「がん哲学外来映画製作委員会」から許可をいただいています。

<言葉の処方箋>

・全力を尽くして心の中でそっと心配する。どうせ、なるようにしかならない。

・生きている限り人には使命がある。

・問題は寿命の長さではなく、何をしたかである。

・本当に大切なものはゴミの中にある。

・人生はいばらの道、されど宴会。

・どんな境遇にあっても、人生は楽しまなければならない。

・使命感があれば寿命も延びる。

・いい人生だったか、悪い人生だったか、最後の5年間で決まる。

・解決はできなくても、解消はできる。

・マイナス×マイナス=プラス

・マイナスの人間同士が集まれば、プラスに変わることができる。

・あなたはそこにいるだけで価値ある存在。

・病気は人生の夏休み。

・天寿を全うしてがんで亡くなる。

・ほっとけ、ほっとけ、気にするな。

がん相談室

まちなかのカフェで、がん患者さんやご家族を対象にがん相談室を開いています。がん患者さんやご家族が医療の場を離れて悩みやニーズを共に分かち合う場、ピアサポートの場です。がん専門の看護師やがん医療に関わる専門家が参加してご相談をお受けしています。ただし、治療に関する具体的なご相談はお受けしておりません。今、何を考えなくてはならないか、どのような情報が必要化などの情報提供に限らせていただきます。